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2013.07.20

読書感想文 【 ※ 個人の感想です 】

近所の旭屋書店で、なぜか平積みになっていたので買って読んでみました。Shinsho1

昨年7月。共同通信が配信したひとつの記事から、この案件が全国的に思いっきり注目されたのは皆さんもうご周知のことと思います。それに関して書かれた連載記事をつなげて、大幅加筆したというのがこの書籍。後世に残すためにも、それを書籍にすること自体は大切なこととは思いますが、記事を書くに当たって、本にするに当たって、そこに書かれた地域の人がそれを読むことについては、書いた人もそれを売る人も特に意識はしていなかったようですね。
私なんかは子どもの保護者としてこの事件にかかわることになってしまったので、誰と誰の話かはハナから知っているわけですが、いくら人物は仮名にしたと言っても、家の職業を書いたらアカンでしょう。仮名にした意味がありません。

この本を最初に開いたところにある「はじめに」には、こう書かれていました。


「それでも私たちは書き続けることでしか、次の悲劇を止めるすべをもたない」

かっこいい! 

でも、実際はどうでしょう。似たような事件が、全国で続々と起こり、あるいは起こっていたことが後から発覚しています。それが、現実です。たくさんの記者さんたちが、日本の津々浦々でいっぱい記事を書き続けているというのに、悲劇の連鎖は一向に止まっていません。マスコミの中の人たちは、どんな仕事してんだろう?、と思ってしまいます。

結局のところ、この本の中の文章を書いた方々は、確かにあちこち取材をして回っていたんやな、ということはよく分かりました。
ただ、書き方として、別に今始まったことではありませんが、どうも学校に問題がある、教師に問題がある、教育委員会に問題がある、という「結論ありき」で書かれています。"学年主任が面倒くさそうに"だの"正規雇用の中山(注: 仮名なのでそのまま書いてます)にくらべるとプロ意識は低かった"だのお前になんでそんなことが分かる?とツッコミたくなる文言があちこちに散りばめられていて、自動的にこの中学校に対する心象を余計に悪くする仕掛けになっています。
確かに中学校の先生たち、大津教育委員会の対応は決して褒められたものではありませんが、問題はそこだけではないでしょう。教員制度や教育委員会制度が抱える「仕組み」の問題。学校と、地域・行政そして警察との関わり方。この事件を通じて私が思ったのは、問題は自分(たち)だけで抱え込んでいてはどうにもならないな、一刻も早く地域や行政や警察と連携して動かないと、どうしようもないな、ということだったので、問題が起こった原因を先生方の行動に求めていくようなこの本の中の文の書き方は正直物足りなさを感じました。

というか、一番気に障ったのはマスコミにはこの事件について何か反省することはないんかい!ということですかね。大幅加筆して本にしたのなら、マスコミの観点から今回の件について何かしらの総括を書くべきだったのでは?と強く思いました。
尾木ママさんたちの第三者委員会の報告書では、ちゃんと自分たちの反省点も書いてはりますし、マスコミ取材の問題点についても指摘があるのに、この本にはそこが完全に抜け落ちていて、私は結局今回の事件も、この人たちにとっては単なる飯ネタのひとつでしかなかったのか、と思わざるを得ませんでした。自分たちの取材ぶりに、何も反省することはなかったのでしょうか。歩いていてマイクとカメラを突き付けられたり、勝手に後ろ姿の写真を新聞や雑誌に掲載されたり、家の電話番号を番組制作会社間で使いまわされた身にはちょっと腹正しささえ感じているところです。まぁ、これがジャーナリズム魂を失くした日本のマスコミの悲しい現実なのでしょうが。

本の最後には生徒アンケートの抜粋が載ってます。保護者たちより先に入手出来て、さぞかし嬉しかったことでしょうね。


私の中では、中学校からはほとんどの人が居なくなりましたが、この事件はまだ何も区切りは付いていません。
あの三人が、H君の遺影に手を合わせるその日が来て、初めて事態は少し進む、そう思っています。

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